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債務の株式化とは デット・エクイティ・スワップsとは DESとは

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  last update:平成19年9月5日


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【 債務の株式化とは デット・エクイティ・スワップDESとは

   1 この頁は、英語では、「デット・エクイティ・スワップ」と呼ばれ、頭文字のDESとも呼ばれる
    「債務の株式化(金銭債権の現物出資)」についての
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【1】 「債務の株式化 デット・エクイティ・スワップDES」とは

  1 「債務の株式化」とは、会社に対する貸付金(会社から見れば
   借入金)を、「現物出資」することです。
    「金銭債権の現物出資」とも言われています。
    「債務の株式化」により、貸借対照表上では、借入金が減少して、
   資本金が増えます。
    借入金を資本金に組み入れたように見えますので、
   「債務の株式化」は、「借入金の資本組入れ」とも、言います。
  2 「現物出資」とは、「株式の発行価額」に相当する「金銭以外の財産」
   を出資して、「株式」を取得することです。
  3 会社に対する貸付金(会社から見れば借入金)も、「現物出資」する
   ことができます。
  4 例えば、「会社の借入金」の貸し主である社長から、「借入金」とし
   て貸借対照表に計上されている「会社への貸付金」を「現物出資の目的
   たる財産」として「現物出資」してもらい、その見返りに、「新株」を
   発行する手法をいいいます。
  5 「会社の借入金」は、「金銭債務」であれば、「未払い役員報酬」な
   どでもかまいません。
  6 「会社の借入金」の債権者は、「現物出資」に応じてくれる者であれ
    ば、社長以外の役員・株主・取引先でもかまいせん。
  7 「債務の株式化」は、「(会社から見れば)債務免除」・「(貸し手から
   見れば)債権放棄」や「資本減少(減資)」を同時に行うことを前提に
   した、「借入金の資本組入れ」です。
  8 「債務の株式化」について、詳しくは、下記のサイトをご覧ください。
      http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/ji04_07_22.pdf
      http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/ji04_07_09.pdf

【2】 「借入金の資本組入れ」の理論

  1 「借入金」勘定を「資本金」勘定に振り替える「借入金の資本組入れ」
   の法的理論は、次のとおりです。
  2 会社にとっての「借入金(借入債務)」は、逆に会社に貸し付けてい
   る債権者からみると、会社に対する「貸付債権」であり、資産です。
  3 だとすれば、会社に対する「貸付債権」を会社に対して「現物出資」
   をすれば、会社からみると、「資本金」が増加し「借入金」が減少する
   ので、「借入金の資本組入れ」が行われたことになります。
  4 例えば、会社に「社長からの借入金」がある場合に、社長に「会社へ
   の貸付金(会社にとっては社長からの借入金)」を「現物出資」をして
   もらい、「資本金」を増加させれば、会社にとっては、「資本金」が増
   加し借入金が減少するので、「借入金の資本組入れ」が行われたことに
   なります。
  5 これを図解すると次のようになります。
  6 負債を「社長からの借入金」のみとし(図1参照)、社長がその「会
   社に対する貸付債権」の全額を「現物出資」します。
  図1:「借入金の資本組入れ」前

資    産  
借  入  金
 
 
資  本  金
 
 
資本剰余金
 
 
利益剰余金
 


  6 会社は社長の「会社に対する貸付債権」を取得します。
  7 会社が取得した「会社に対する貸付債権」は、自己株式におけると同
   様の意味で、「自己貸付金」となります(図2参照)。

  図2:現物出資による「自己貸付金」の取得

 
自己貸付金
 
 
増加した資本金
 
資  産  
借  入  金
 
 
資  本  金
 
 
資本剰余金
 
 
利益剰余金
 

  8 「払込期日」における「現物出資」の仕訳は、次のとおりです。
    (借)自己貸付金500万円/(貸)新株式払込金500万円
  9 この「自己貸付金」と貸借対照表に計上されている「借入金」とは、
   次の仕訳のとおり、「債権の混同」(民法520条)により同時に消滅しま
   す(図3参照)。
      (借)借入金 500万円/(貸)自己貸付金500万円

  図3:混同による「借入金」の消滅

 
自己貸付金
 
 
借   入   金
 

        
資     産
 
増加した資本金
資本金
資本剰余金
利益剰余金


  10 払込期日の翌日に、次の仕訳のとおり、「資本金」が増加します。
      (借)新株式払込金500万円/(貸)資本金500万円

  11 結果として、「借入金の資本組入れ」が行われたことになります
   (図4参照)。

  図4:「借入金の資本組入れ」後

資    産  


資本金


 
 
資本剰余金
 
 
利益剰余金
 


  12 図1ー図4は、佐々木正己著「『借入金の資本組入れ』の理論と税務」24頁
   より引用しました。


【3】 「現物出資」規制との関係

  1 「現物出資」する「社長借入金」については、会社法により
   「現物出資」の規制が無くなりましたので、機動的・経済的に、
   「借入金の資本組入れ」ができます。

【4】 「借入金の資本組入れ」と所得税

  1 「現物出資」は、所得税法上、譲渡所得の発生原因になります。
  2 「現物出資財産」が、「不動産」であれば、分離譲渡所得課税が行わ
   れます。
  3 「現物出資財産」が、「動産」であれば、総合譲渡所得課税が行われ
   ます。
  4 「借入金の資本組入れ」の場合の「現物出資財産」は、「金銭債権」
   です。
  5 「現物出資財産」が、「金銭債権」の場合には、原則として、「雑所得」
   が発生します。
  6 「現物出資財産」が、「会社に対する貸付金」である場合には、原則
   として、所得税は課税されません。

【5】 「借入金の資本組入れ」と贈与税

  1 「借入金の資本組入れ」は、「現物出資」ですので、「新株」が発行
   されます。
  2 同族会社において、新株発行の前後で持ち株比率が変動する場合には、
   「みなし贈与」の問題が発生します。
  3 「みなし贈与」の問題がおこらないようにするには、時価発行にする
   か、新株発行の前後で持ち株比率を変動させないようにします。
  4 「借入金の資本組入れ」の税務の参考文献としては、下記の書籍があ
   ります。
    佐々木正己著「『借入金の資本組入れ』の理論と税務」


【6】 「借入金の資本組入れ」の効果

  1 「借入金の資本組入れ」の効果として、次のようなものがあります。
   (1) 単独の効果として、自己資本比率の改善
   (2) 単独の効果として、貸付金の相続財産からの除外
   (3) 減資との併用の効果として、繰越欠損金の填補
   (4) 減資との併用の効果として、債務免除益の発生回避策


【7】 単独の効果ーー自己資本比率の改善ーー

  1 「総資本」に占める「自己資本」の比率を「自己資本比率」といいます。
  2 「自己資本比率」は、経営健全性示す指標として最重要視されています。
  3 自己資本比率を高めるためには、「総資本」を一定とすれば、「負債」
   を減少するか、または、「資本」を増加します。
  4 図1の貸借対照表のように、「総資本」が1億円(他人資本8,000万
   円+自己資本2,000万円)で、「負債(他人資本)」が「借入金」の8,000
   万円のみの会社が、社長からの「借入金」の2,000万円につき、「借入
   金の資本組入れ」を行ったとします。
  5 「借入金の資本組入れ」前は、「自己資本比率」が20%(自己資本2,000
   万円÷総資本1億円)でした。
  6 社長からの「借入金」2,000万円につき「借入金の資本組入れ」を行
   ったことにより、「自己資本」が2,000万円増加し、4,000万円になります。
  7 「他人資本(負債)」は、2,000万円減少し、6,000万円になります。
  8 図2の貸借対照表のように、「借入金の資本組入れ」後の「自己資本
   比率」は、40%(自己資本4,000万円÷総資本1億円)になります。

  図1:「借入金の資本組入れ」前

資産100%
10,000万円
 
 
借入金80%
8,000万円
 
  
資本20%
2,000万円


  図2:「借入金の資本組入れ」後

資産100%
10,000万円
 
 
借入金60%
6,000万円
 
 
 
資本40%
4,000万円
 


【8】 単独の効果ーー貸付金の相続財産からの除外ーー

  1 「財産評価基本通達」によれば、「債務超過会社」に対する「貸付金」
   であっても、原則として、「元本価額」で評価されます。
  2 「債務超過会社」に対する「貸付金」が、「相続財産」に含まれると
   予想される場合には、事前に、「借入金の資本組入れ」により、「貸付
   金」を「株式」に変換しておけば、評価額を「0円」にして、結果とし
   て、「貸付金」を「相続財産」から除外できる場合があります。
  3 「貸付金」が「借入金の資本組入」により、「株式」になっていれば、
   「純資産価額」で評価できます。「債務超過会社」であれば、株式の評
   価額を「0円」にすることも可能です。

【9】 減資との併用の効果ーー繰越欠損金の填補ーー

  1 「欠損金」がある会社において 「借入金の資本組入れ」後において、
   「無償減資」を行えば、「繰越欠損金」が消却できます。
  2 図3の貸借対照表のように、「前期繰越損失」2,000万円、「借入金」8,000
   万円がある会社(図3参照)において、「借入金」8,000万円の内、社長
   からの「借入金」2,000万円につき、「借入金の資本組入れ」を行ったと
   します。
  3 「借入金の資本組入れ」により、「資本金」が、2,000万円増加して、4,000
   万円になります(図4参照)。
  4 ここで、「資本金」を、2,000万円減少して、2,000万円にすれば、「減
   資差益」が2,000万円発生します(図5参照)。
  5 ちなみに、平成14年4月1日施行の商法施行規則第70条によれば、「減
   資差益」は、「その他資本剰余金」とされ、「資本剰余金の部」に計上
   されます。
  6 「減資差益」2,000万円と「前期繰越損失」2,000万円とを相殺すると
   「前期繰越損失」2,000万円が消えます(図6参照)。

  図3:「借入金の資本組入れ」前

資産
8,000万円
 
 
借入金
8,000万円

  
前期繰越損失
2,000万円
資本金
2,000万円


  図4:「借入金の資本組入れ」後

資産
8,000万円
 
 
借入金
6,000万円
 
 
 
資本金
4,000万円
    
前期繰越損失
2,000万円


  図5:「減資」

資産
8,000万円
 
 
借入金
6,000万円

 
資本金
2,000万円
前期繰越損失
2,000万円
減資差益
2,000万円


  図6:「減資」後

資産
8,000万円
 
 
借入金
6,000万円
 
 
資本金
2,000万円



【10】 減資との併用の効果ーー債務免除益の発生回避策ーー

  1 前掲の図3の会社において、「前期繰越損失」2,000万円を消却するた
   めに、2,000万円の「借入金の債務免除」を受けたとします。
  2 2,000万円の「債務免除益」については、法人税法上、益金に算入さ
   れます。
  3 図3の会社の「前期繰越損失」2,000万円が、「青色申告書を提出した
   事業年度の欠損金」に該当し、損金算入が可能であれば、「債務免除益」
   の益金と相殺されるので、問題はありません。
  4 しかし、図3の会社の「前期繰越損失」2,000万円が、「青色申告書を
   提出した事業年度の欠損金」に該当しない場合には、問題です。「債務
   免除益」の益金と相殺される損金がないからです。
  5 この場合には、「借入金の資本組入れ」後において、「無償減資」を
   行います。
  6 「借入金の債務免除益」は、会社の益金とされるのに対し、「借入金
   の資本組入れ」も「無償減資」も、資本取引であるので、会社に益金は
   発生しません。
  7 この方法によれば、「債務免除益」の益金課税が避けられます。
  8 ただし、場合によっては、同族株主間での贈与税の問題が発生するこ
   ともありえますので、事前に税理士にご相談ください。

      



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