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【 債務の株式化とは デット・エクイティ・スワップDESとは 】
1 この頁は、英語では、「デット・エクイティ・スワップ」と呼ばれ、頭文字のDESとも呼ばれる
「債務の株式化(金銭債権の現物出資)」についての方法・手続き・手順について、
ご説明するサイトです。
2 「債務の株式化(金銭債権の現物出資)」について、佐々木事務所へ
ご依頼されるときには、次のサイトをご覧下さい。
債務の株式化の手続き デット・エクイティ・スワップDESの代行代理
【1】 「債務の株式化 デット・エクイティ・スワップDES」とは
1 「債務の株式化」とは、会社に対する貸付金(会社から見れば
借入金)を、「現物出資」することです。
「金銭債権の現物出資」とも言われています。
「債務の株式化」により、貸借対照表上では、借入金が減少して、
資本金が増えます。
借入金を資本金に組み入れたように見えますので、
「債務の株式化」は、「借入金の資本組入れ」とも、言います。
2 「現物出資」とは、「株式の発行価額」に相当する「金銭以外の財産」
を出資して、「株式」を取得することです。
3 会社に対する貸付金(会社から見れば借入金)も、「現物出資」する
ことができます。
4 例えば、「会社の借入金」の貸し主である社長から、「借入金」とし
て貸借対照表に計上されている「会社への貸付金」を「現物出資の目的
たる財産」として「現物出資」してもらい、その見返りに、「新株」を
発行する手法をいいいます。
5 「会社の借入金」は、「金銭債務」であれば、「未払い役員報酬」な
どでもかまいません。
6 「会社の借入金」の債権者は、「現物出資」に応じてくれる者であれ
ば、社長以外の役員・株主・取引先でもかまいせん。
7 「債務の株式化」は、「(会社から見れば)債務免除」・「(貸し手から
見れば)債権放棄」や「資本減少(減資)」を同時に行うことを前提に
した、「借入金の資本組入れ」です。
8 「債務の株式化」について、詳しくは、下記のサイトをご覧ください。
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/ji04_07_22.pdf
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/ji04_07_09.pdf
【2】 「借入金の資本組入れ」の理論
1 「借入金」勘定を「資本金」勘定に振り替える「借入金の資本組入れ」
の法的理論は、次のとおりです。
2 会社にとっての「借入金(借入債務)」は、逆に会社に貸し付けてい
る債権者からみると、会社に対する「貸付債権」であり、資産です。
3 だとすれば、会社に対する「貸付債権」を会社に対して「現物出資」
をすれば、会社からみると、「資本金」が増加し「借入金」が減少する
ので、「借入金の資本組入れ」が行われたことになります。
4 例えば、会社に「社長からの借入金」がある場合に、社長に「会社へ
の貸付金(会社にとっては社長からの借入金)」を「現物出資」をして
もらい、「資本金」を増加させれば、会社にとっては、「資本金」が増
加し借入金が減少するので、「借入金の資本組入れ」が行われたことに
なります。
5 これを図解すると次のようになります。
6 負債を「社長からの借入金」のみとし(図1参照)、社長がその「会
社に対する貸付債権」の全額を「現物出資」します。
図1:「借入金の資本組入れ」前
資 産 | 借 入 金 |
資 本 金 |
|
資本剰余金 |
|
利益剰余金 |
6 会社は社長の「会社に対する貸付債権」を取得します。
7 会社が取得した「会社に対する貸付債権」は、自己株式におけると同
様の意味で、「自己貸付金」となります(図2参照)。
図2:現物出資による「自己貸付金」の取得
自己貸付金 |
増加した資本金 |
資 産 | 借 入 金 |
資 本 金 |
|
資本剰余金 |
|
利益剰余金 |
8 「払込期日」における「現物出資」の仕訳は、次のとおりです。
(借)自己貸付金500万円/(貸)新株式払込金500万円
9 この「自己貸付金」と貸借対照表に計上されている「借入金」とは、
次の仕訳のとおり、「債権の混同」(民法520条)により同時に消滅しま
す(図3参照)。
(借)借入金 500万円/(貸)自己貸付金500万円
図3:混同による「借入金」の消滅
自己貸付金 |
借 入 金 |
資 産 |
増加した資本金 |
資本金 | |
資本剰余金 | |
利益剰余金 |
10 払込期日の翌日に、次の仕訳のとおり、「資本金」が増加します。
(借)新株式払込金500万円/(貸)資本金500万円
11 結果として、「借入金の資本組入れ」が行われたことになります
(図4参照)。
図4:「借入金の資本組入れ」後
資 産 | 資本金 |
資本剰余金 |
|
利益剰余金 |
12 図1ー図4は、佐々木正己著「『借入金の資本組入れ』の理論と税務」24頁
より引用しました。
【3】 「現物出資」規制との関係
1 「現物出資」する「社長借入金」については、会社法により
「現物出資」の規制が無くなりましたので、機動的・経済的に、
「借入金の資本組入れ」ができます。
【4】 「借入金の資本組入れ」と所得税
1 「現物出資」は、所得税法上、譲渡所得の発生原因になります。
2 「現物出資財産」が、「不動産」であれば、分離譲渡所得課税が行わ
れます。
3 「現物出資財産」が、「動産」であれば、総合譲渡所得課税が行われ
ます。
4 「借入金の資本組入れ」の場合の「現物出資財産」は、「金銭債権」
です。
5 「現物出資財産」が、「金銭債権」の場合には、原則として、「雑所得」
が発生します。
6 「現物出資財産」が、「会社に対する貸付金」である場合には、原則
として、所得税は課税されません。
【5】 「借入金の資本組入れ」と贈与税
1 「借入金の資本組入れ」は、「現物出資」ですので、「新株」が発行
されます。
2 同族会社において、新株発行の前後で持ち株比率が変動する場合には、
「みなし贈与」の問題が発生します。
3 「みなし贈与」の問題がおこらないようにするには、時価発行にする
か、新株発行の前後で持ち株比率を変動させないようにします。
4 「借入金の資本組入れ」の税務の参考文献としては、下記の書籍があ
ります。
佐々木正己著「『借入金の資本組入れ』の理論と税務」
【6】 「借入金の資本組入れ」の効果
1 「借入金の資本組入れ」の効果として、次のようなものがあります。
(1) 単独の効果として、自己資本比率の改善
(2) 単独の効果として、貸付金の相続財産からの除外
(3) 減資との併用の効果として、繰越欠損金の填補
(4) 減資との併用の効果として、債務免除益の発生回避策
【7】 単独の効果ーー自己資本比率の改善ーー
1 「総資本」に占める「自己資本」の比率を「自己資本比率」といいます。
2 「自己資本比率」は、経営健全性示す指標として最重要視されています。
3 自己資本比率を高めるためには、「総資本」を一定とすれば、「負債」
を減少するか、または、「資本」を増加します。
4 図1の貸借対照表のように、「総資本」が1億円(他人資本8,000万
円+自己資本2,000万円)で、「負債(他人資本)」が「借入金」の8,000
万円のみの会社が、社長からの「借入金」の2,000万円につき、「借入
金の資本組入れ」を行ったとします。
5 「借入金の資本組入れ」前は、「自己資本比率」が20%(自己資本2,000
万円÷総資本1億円)でした。
6 社長からの「借入金」2,000万円につき「借入金の資本組入れ」を行
ったことにより、「自己資本」が2,000万円増加し、4,000万円になります。
7 「他人資本(負債)」は、2,000万円減少し、6,000万円になります。
8 図2の貸借対照表のように、「借入金の資本組入れ」後の「自己資本
比率」は、40%(自己資本4,000万円÷総資本1億円)になります。
図1:「借入金の資本組入れ」前
資産100% 10,000万円 |
借入金80% 8,000万円 |
資本20% 2,000万円 |
図2:「借入金の資本組入れ」後
資産100% 10,000万円 |
借入金60% 6,000万円 |
資本40% 4,000万円 |
【8】 単独の効果ーー貸付金の相続財産からの除外ーー
1 「財産評価基本通達」によれば、「債務超過会社」に対する「貸付金」
であっても、原則として、「元本価額」で評価されます。
2 「債務超過会社」に対する「貸付金」が、「相続財産」に含まれると
予想される場合には、事前に、「借入金の資本組入れ」により、「貸付
金」を「株式」に変換しておけば、評価額を「0円」にして、結果とし
て、「貸付金」を「相続財産」から除外できる場合があります。
3 「貸付金」が「借入金の資本組入」により、「株式」になっていれば、
「純資産価額」で評価できます。「債務超過会社」であれば、株式の評
価額を「0円」にすることも可能です。
【9】 減資との併用の効果ーー繰越欠損金の填補ーー
1 「欠損金」がある会社において 「借入金の資本組入れ」後において、
「無償減資」を行えば、「繰越欠損金」が消却できます。
2 図3の貸借対照表のように、「前期繰越損失」2,000万円、「借入金」8,000
万円がある会社(図3参照)において、「借入金」8,000万円の内、社長
からの「借入金」2,000万円につき、「借入金の資本組入れ」を行ったと
します。
3 「借入金の資本組入れ」により、「資本金」が、2,000万円増加して、4,000
万円になります(図4参照)。
4 ここで、「資本金」を、2,000万円減少して、2,000万円にすれば、「減
資差益」が2,000万円発生します(図5参照)。
5 ちなみに、平成14年4月1日施行の商法施行規則第70条によれば、「減
資差益」は、「その他資本剰余金」とされ、「資本剰余金の部」に計上
されます。
6 「減資差益」2,000万円と「前期繰越損失」2,000万円とを相殺すると
「前期繰越損失」2,000万円が消えます(図6参照)。
図3:「借入金の資本組入れ」前
資産 8,000万円 |
借入金 8,000万円 |
前期繰越損失 2,000万円 |
資本金 2,000万円 |
図4:「借入金の資本組入れ」後
資産 8,000万円 |
借入金 6,000万円 |
資本金 4,000万円 |
|
前期繰越損失 2,000万円 |
図5:「減資」
資産 8,000万円 |
借入金 6,000万円 |
資本金 2,000万円 |
|
前期繰越損失 2,000万円 |
減資差益 2,000万円 |
図6:「減資」後
資産 8,000万円 |
借入金 6,000万円 |
資本金 2,000万円 |
【10】 減資との併用の効果ーー債務免除益の発生回避策ーー
1 前掲の図3の会社において、「前期繰越損失」2,000万円を消却するた
めに、2,000万円の「借入金の債務免除」を受けたとします。
2 2,000万円の「債務免除益」については、法人税法上、益金に算入さ
れます。
3 図3の会社の「前期繰越損失」2,000万円が、「青色申告書を提出した
事業年度の欠損金」に該当し、損金算入が可能であれば、「債務免除益」
の益金と相殺されるので、問題はありません。
4 しかし、図3の会社の「前期繰越損失」2,000万円が、「青色申告書を
提出した事業年度の欠損金」に該当しない場合には、問題です。「債務
免除益」の益金と相殺される損金がないからです。
5 この場合には、「借入金の資本組入れ」後において、「無償減資」を
行います。
6 「借入金の債務免除益」は、会社の益金とされるのに対し、「借入金
の資本組入れ」も「無償減資」も、資本取引であるので、会社に益金は
発生しません。
7 この方法によれば、「債務免除益」の益金課税が避けられます。
8 ただし、場合によっては、同族株主間での贈与税の問題が発生するこ
ともありえますので、事前に税理士にご相談ください。
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